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DancersWeb Vol.67

荒井英之  

Arai Hideyuki/DANIEL

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「ダンサーとは踊る人のことではなく、
 人の心を踊らせる人」
バレエダンサー

 2010年のアメリカン・エキスプレス・カードのCMで一気に知名度を上げたバレエダンサーといえば、「荒井英之」だろう。その彫りの深い端正な顔立ちと鮮やかな跳躍は、まだ記憶に新しい。当時の反響には本人も想像以上だったようだ。

 

 かなり大きかったですね。バレエ界の知人からは「見たよ~」と言われたり、海外から帰国したダンサー達からは「空港でヒデに迎えられたよ」と。入国審査のところにでっかいポスターが貼ってあったみたいです。僕はその時期、海外行きの飛行機は利用してなかったので見られませんでしたけど(笑)。

 

―そのCMで予想外の仕事のオファーがあったそうですね。

 

 一般の方にどのくらい浸透したのかは分かりませんが、「あのCMを見ました!」とNHK紅白歌合戦で郷ひろみさんと共演させていただくオファーが舞い込み、転職サイトビズリーチのWeb CMのオファーをいただいたりしました。バレエという舞台芸術がさらに広がっていけるようにバレエ界でももっと取り上げてもらいたいし、外の世界にバレエが広がるようにもっと配信していきたいなと思います。

 

―ブラジル・サンパウロの生まれで「DANIEL(ダニエル)」という本名もお持ちなので、てっきり外国の方の血が入っていると思っていました!

 

 生粋の日本人です(笑)。サンパウロは一歳になる前までの暮らしだったので、まったく覚えていないですけど、また訪れてみたい気持ちはあります。ブラジル料理屋さんにはよく行くんですけどね(笑)

 

― 10歳からバレエをはじめられたのは、ご自身の希望だったのでしょうか?

 

 母がエストレーラバレエを始めてから5回目の発表会を開催するということで、王子が出てくる作品を作りたい思いがあったようなんです。

それで僕に「一年でいいからバレエをやってみない?もし1年間バレエ続けてくれたら何でも好きなもの買ってあげるから」と、完全に策略にハマりましたね(笑)。

その当時の僕は子供用の自転車に乗っていたので、大人用の自転車が欲しくて。特に男の子には有効な手だと思いますよ、好きなもの買ってあげる作戦は(笑)。

 

―プロのダンサーになろうと意識したのはいつ頃からですか?

 

 12歳の頃に熊川哲也さんを観て、「バレエってカッコいいんだ!」と感動してからひたすらバレエ、バレエの毎日でしたね。プロになるためにバレエを頑張ったというよりは、バレエをひたすらやっていたらプロになったという感覚に近いですね。

もちろん今では、より一層プロフェッショナルとしての意識を持ってバレエと向き合っています。なので、若い子がどうしたらいいか悩んでいたら「行動あるのみ!」と言いますね。

 

―その頃、憧れのダンサーはいましたか?

 

 やはり熊川哲也さんですね。エネルギッシュな踊りに子供だった僕は心打たれました。「Being a Dancer」の熊川さんのDVDでアレキサンダー・アガジャノフ先生が解説していたんですが、「観る人に喜びを与えてくれる、これがすごいことなんだ!」と。まさにその通りで、自分もそうなりたいと今でも思って踊っています。

 

―17歳でカンヌ・ロゼラハイタワーに2年間留学されていますが、きっかけは?

 

 2002年にローザンヌ国際バレエコンクールに出場したときに、ヤン・ヌィッツ(ローザンヌ国際バレエコンクール芸術顧問)さんがモニク・ルディエールさん(元パリ・オペラ座バレエ団エトワール)を紹介してくれて、その場で承諾してくれました。

 

―モニク・ルディエールさんのレッスンはどうでしたか?

 

 「ここはこうっ!!」って見本を見せたときのオーラがすごくて!

いわゆる長嶋監督タイプのスターですね。モニクからは目で見て盗むことを学びました。他にもたくさんの先生から教わる機会があったんですが、その人それぞれの教え方があり、教わる側が柔軟に受け止めることによって幅が広がるんだな、ということも体得できましたね。

 

―その後、日本を拠点に活動の拠点を移した理由は?

 

 やはり日本が好きだからですかね。日本人の気質や日本語、日本車とか…(笑)。日本語の特にひらがなの発音って好きなんですよね。

 

―もしダンサーでなかったら、どんな職業を選んでいましたか?

 

 それこそひたすらバレエだったので、考えていなかったし、今でもそれ以外考えられない。あえて言うなら“自分を表現する仕事”についていたのではないかと思います。今でも表現するという意味で、“荒井英之”を求め続け、追求し続けていますから。

 

―ターニングポイントとなった出演舞台はなんでしょうか?

 

 カンヌ・ロゼラハイタワーにゲスト出演した2003年の『ドン・キホーテ』と、2008年のKバレエカンパニーの『カルメン』ですね。

カンヌの『ドン・キホーテ』はスクール公演だったんですが、僕達カンパニーからも何人かソリストが客演しました。僕はジプシーのボスのシェフジタンの役をもらったんですが、スクールの男の子たちからしたら面白くないんですよね。歳だってせいぜいふたつみっつしか変わらないのに「ソリストの役持っていきやがって!」と。

 反感の目つきとか、ピリピリの空気がバシバシ伝わってくるリハーサル初日だったのが、一度踊って見せたら、次の日から肩組んで挨拶してきましたからね(笑)。

海外の人のそういうところって好きです(笑)。踊りで心通じ合えた瞬間でした。

 

 Kバレエカンパニーの『カルメン』ではタガを外すということを学び、それ以降は役に対してのアプローチの仕方と、役が濃ければ濃いほど自分にとって表現しやすいと感じるようになりましたね。タガを外すことはかなり重要だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―これまでもっとも満足感を得ることができた舞台は何ですか?

 

 2020年の日本バレエ協会の『海賊』でしょうか。あの舞台での満場の拍手は忘れられないです。バリエーションが終わったあとの「今この時間はすべて自分のもの」という、まるで映画のワンシーンのような拍手とスポットライトの中に包まれていました。

 主演の奥村康祐くんと加治屋百合子さんという素晴らしいパートナーに恵まれ舞台を引っ張ってもらい、あのアリに到達できました。あの二人でなかったらあの日の僕のアリはなかったと思います。

 

―逆に、ご自分の中で思い通りにいかず、悔しい思いをした舞台はありますか?

 

 わりといつもですよ(笑)。その『海賊』の舞台ですら、「ここはもっとこうできた」「こうやりたかった」って今でも振り返ることもありますしね。

 

―落ち込んだときなど、どうやって精神を立て直していますか?

 

 そのときの自分の気持ちに逃げずに浸って、時がくるのを待つ、ですかね。

僕の大好きなGLAYに「ROCK'N'ROLL SWINDLE」という歌があって、その中に「酔いどれ吐いてサルベージ」という歌詞が出てくるんですが、

 《誰にだって悪いときはある!落ちるところまで落ちてサルベージ!這い上がろうぜ!!》って聞こえるんです。僕の勝手な解釈ですが(笑)。

だから落ち込んだときこそ、悲しい曲とか暗い曲を聴いたりして、そこから「よしっ!」っとなったときに這い上がりますね。泣くまで待とうホトトギス、かな。

 

―後輩たちに伝えたい言葉はありますか?

 

 ありますよ~。「バレエは心で踊るもの。動きではなく踊る。ダンサーとは踊る人のことではなく人の心を踊らせる人」です。

 

―ダンサーとしてのご自身の強みは?

 

 強みはやはりパッションですかね。なのでやはり生の舞台が好きです。バレエは生ものですから舞台で生!が1番いいですね。

 

―2021年3月6日(土)に、日本バレエ協会の『オーロラ姫の結婚』でブルーバードでの出演が決定しています。

 

 ディベルティスマンなのでお芝居的要素はあまりないのですが、やはりブルーバードは見所のひとつなので、「しなやかさ」を目標に頑張りたいと思います!

 2018年には僕と浅田良和くんとでミュージックミニライブ&トークショウを開いたり色々活動しているんですが、また新たな可能性に向けて様々な挑戦をしていきたいですね。

 

―今のコロナ禍の状況では中々舞台も難しいと思いますが、バレエ講師も続けていらっしゃいますね。

 

 千葉の我孫子市にある「エストレーラバレエ」で、毎週火・木・金・土にレッスンしています。僕は「伝える・発見する・成長」をいつも心がけています。上達を実感する喜びをぜひ体感してもらいたいですね!

2021都民芸術フェスティバル参加公演

日本バレエ協会「コンテンポラリーとクラシックで紡ぐ"眠れる森の美女"」

2021年3月6日(土)、7(日)東京文化会館 大ホール

https://tomin-fes.com/list/ballet02.html

 

「エストレーラバレエ」

千葉県我孫子市布佐1-18-2

(JR成田線・布佐駅から徒歩5分)

TEL:04-7189-5885

※無料体験・無料見学 実施中

https://www.estrelaballet.com/

○荒井英之プロフィール

10歳よりエストレーラバレエでレッスンを始め、11歳より山路瑠美子に師事する。
埼玉全国舞踊コンクール・ジュニア2位。こうべ全国洋舞コンクール・男性ジュニア2位。アジア・パシフィックコンクール・ファイナリスト。まちだ全国バレエコンクール・シニア1位。2002年から2年間、カンヌ・ロゼラハイタワー ジュニアカンパニーへ留学し、モニク・ルディエールに師事。2007年Kバレエカンパニーに入団し、全公演に出演。2010年退団。篠原聖一バレエリサイタル、オールニッポンバレエガラコンサート2012、DANCE SYMPHONY 2013、日本バレエ協会など様々な舞台に出演している。
https://www.estrelaballet.com/hideyuki.html

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