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川島 麻実子
Kawashima Mamiko

DancersWeb
Vol.79 Feb 2022
バレエダンサー
「目の前のやるべき事をとにかくやってみる」
恵まれたほっそりとした肢体とくっきりとした目鼻立ちを持ち、可憐な雰囲気を纏う。
舞台に立っているだけでも周囲が華やぐ、プリマになるべくしてなったというべきバレエダンサーの川島麻実子。
2004年の大学在学中に東京バレエ学校に入学し、2006年に同バレエ団に入団。2016年4月にプリンシパルに
昇格以降、2021年3月まで在籍15年に渡り活躍。
現在はフリーとして活動を再開し、2022年2月27日(日)には札幌文化芸術劇場で「白鳥の湖」でオデット/
オディールに主演、ジークフリート王子役には東京バレエ団プリンシパルの秋元康臣と早くも再会を果たす。
そして翌月の3月6日には、日本バレエ協会の「エスメラルダ」に初主演するという超多忙な最中、
インタビューに快く応じてくれた。
― 大学生活とバレエを両立されていらっしゃったというバックグランドをお持ちですが、
どのような生活だったのでしょうか?
大学では文学部英米文学部を専攻していました。
朝6時から9時までバイト、10時からバレエ団のクラスをして合間に大学にいき、バレエ団に戻ってリハーサル。
その後また大学に戻ったり、授業がない時はバイトに行ったり……。
当時はどちらもやり切りたい!との強い思いもありましたし、どちらも楽しかったのであまり辛いとは
思わなかったのですが、今もう一度今やるとなると出来る自信があまりありません(笑)。
― 学生のころバレエ以外で熱中していたものは何ですか?
とにかく動くことが大好きな活発な子供でした!
小学生の頃はハンドボール部に所属して、バレエ以外にも水泳、お習字、ピアノ、塾にも通っていました。
中学に入ってから高校3年生まで唯一続いたのがバレエで、週末のバレエが私の趣味であり息抜きでした。
― バレエダンサーにならなかったらどのような職業を選んでいたと思われますか?
何になっていたのでしょう……。
大学に進学したときは普通に就職してOLになってみたいなと思った時期もありました。
でもどんな仕事をしていても、バレエとはなんらかの形で繋がっていたのではないかと思います。
― 観客として観た舞台でもっとも印象に残っている舞台とダンサーは?
シルヴィ・ギエムさんが静岡にいらしたときの公演です。
『シシィ』で登場した姿は今でもはっきりと覚えています。
それと、ウラジーミル・マラーホフさんの『眠れる森の美女』の王子です。
― プロになってから目標・憧れとしているダンサーはいますか?
やはりシルヴィ・ギエムさんですね。
あれだけの素晴らしい条件と才能に溢れる方でも、常に努力を怠らずにいらっしゃる姿を間近で見て、
ダンサーとして人として、本当に素晴らしい方だなと身の引き締まる思いでした。
また本番中は、ご自身のことだけでなく私達にも気を配り、私達が踊っている時はアップをしながら
袖で観ていてくださり、次の舞台に向けてより良くなるためのアドバイスを毎回くださいました。
その情熱と愛情に応えたくて、舞台上でもスタジオでも常に必死でした。
― 周囲に言われたことで、もっとも感銘した、また非常に影響を受けた言葉はありますか?
ギエムさんからはじめて「Good!」と言われたときです。
いつもは「better」が最上級の褒め言葉だったのでとても驚きました。
それと、元ニューヨーク・シティ・バレエ団プリンシパルのベン・ヒューズさんの言葉です。
『イン・ザ・ナイト』の初演の日に「マミコ、今日の踊りで満足?」と言われたときに
とてもショックでしたが、次からは絶対に言われないようしなくては!
と切り替えられました。
―このまま幕が降りないでほしいと思うほど一番役にのめり込んだ舞台はありますか?
『アルルの女』です!
―もっとも悔しい思いをした出演舞台はありますか?
怪我をしていたときなど、“楽しむ“ことよりも“こなす“ことに意識が向かってしまったとき。
―日常生活でダンサーで良かったと思うときはありますか?
姿勢が良いと言われたり、所作が美しくなる点…かな。
― これまでダンサーを辞めたいと思ったことはありますか?
何度もあります。学生の頃は本当にやめよう!と思って、お稽古に行かなくなったときもありました。
でも人生において選択をしなくてはならないときは、常に心と頭で自問自答して、自分が納得のいくよう
選択してきました。そして自分の心が決めた道は、どんな選択も正解だと思ってます。
― これまででもっとも辛い時期を経験されたことは?
たくさん辛いこともあったと思うのですが、振り返るとあまり覚えていません(笑)
あんまり辛くなかったのかな…。
起きたことは必然だし、すべての経験を経て「今」があるので、今がある感謝の方が大きいです。
どのように乗り越えられたのかは、「目の前のやるべき事をとにかくやってみる」に徹したからだと
思います。あとは、家族や友達に甘えながら、意見も聞きながら、時間をかけて納得がいくまで
自分のペースで向き合います。
― ターニングポイントは『白鳥の湖』と語っていらっしゃいますが、
デビューを飾ってからその後何度も踊られて、また2月に北海道で主演されますね。
白鳥の登場するシーンの緊張感は自分が踊っていても観ていても、毎回特別な場所です。
― 3月には日本バレエ協会で『ラ・エスメラルダ』に主演デビューされます。
とても長い作品で、踊るシーンも多く舞台に出ずっぱりなのでとてもチャレンジングな作品だと
思っています。今まであまり演じることがなかった役柄ですし、リハーサルをしていく中でどんな感情と
出合うのか楽しみです!
―本作のみどころと、この役に賭ける思いをお聞かせください。
出産して間もないタイミングでこのお話しをいただき、引き受けて大丈夫なのか不安な気持ちもありました。
でも、次チャンスがいつくるかわからないし、もしかしたら来ないかもしれない。
素直に「踊りたい!」と思ったんです。
なので、この出合いを大切に、本番までしっかりと向き合っていきたいです。
2022年2月26日(土)、27日(日)『白鳥の湖』札幌文化芸術劇場 hitaru 劇場
※川島麻実子は27日のマチネに出演
https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=2114
2022年3月、5日(土)6日(日)『ラ・エスメラルダ』東京文化会館 大ホール
※川島麻実子は6日のマチネに出演
https://tomin-fes.com/list/ballet03.html
【川島麻実子プロフィール】
3歳よりバレエを始める。2004年、大学在学中に東京バレエ学校に入学し、スクール・パフォーマンスの「白鳥の湖」の第2幕でオデットを踊る。2006年東京バレエ団に入団。同年世界バレエフェスティバル特別プロ「白鳥の湖」で初舞台を踏む。これまでに「眠れる森の美女」オーロラ姫役/「白鳥の湖」オディール役/「エチュード」
エトワール役など数々の作品で主演を演じ、ベジャール、マッツエック、キリアン、フォーサイスなど世界的な振付家の作品等に出演。現在はフリーランスとして舞台活動や指導にあたる。

